Interview

菊地凛子インタビュー「こだわりを突き詰めていくことは、時に狂気」 | Numero TOKYO

女優としてはもちろん、ファッションアイコンとしても世界を舞台に活躍する菊地凛子。彼女が主演する最新作は、若手監督が撮るショートフィルムだ。その撮影現場に足を運ぶと、そこには近未来の『靴職人』に扮した彼女の姿が。出演作は「監督の人柄と台本で選ぶ」という菊地凛子に直撃インタビュー。本作との出会いと、意気込みについて聞いた。<映画『ハイヒール』の情報はこちら> こだわりを持っている人物像に惹かれました ──『ハイヒール』へ出演の決め手は何? 「今回演じるのは性別がちょっと変わった人物なんです。中性的な、または男性といった、性別が女性ではない役柄と、そして職人という背景。こだわりを持っている人物像に惹かれました」 ──出演する作品を選ぶ基準はありますか? 「監督の人柄と、台本ですね」 ──若手監督やスタッフとのモノ作りで感じることは? 「アイデアの共有は楽しいですし、考えたこと経験したことのないことを得られる時の感覚は嬉しいです。学ぶことが沢山あります。今回は短編作品ですが、それが長編作品だとしても、自分がやる仕事としては、全く違いは無いと思います」 【靴に対する思い入れ、情熱】 女優としてはもちろん、ファッションアイコンとしても世界を舞台に活躍する菊地凛子。彼女が主演する最新作は、若手監督が撮るショートフィルムだ。その撮影現場に足を運ぶと、そこには近未来の『靴職人』に扮した彼女の姿が。出演作は「監督の人柄と台本で選ぶ」という菊地凛子に直撃インタビュー。本作との出会いと、意気込みについて聞いた。<映画『ハイヒール』の情報はこちら> 靴に対する思い入れ、情熱 ──撮影現場の雰囲気はどうでしたか? 「監督は柔らかく暖かい人でしたし、スタッフの皆さんも含め、とてもビジュアルや美しさにこだわって作っている中で、同じ方向のゴールを見てやれたので、とても良かったです」 ──撮影が始まって間もないですが、印象的な場面はありましたか?

Numero TOKYO

Q&A message

Q1:映画の見どころ、観客へのメッセージ、撮影時の思い出など

Q2:人類が滅びて、自分がアンドロイドになる時、1つだけ残したい欲望(感情)はなんですか?


イ・インチョル(監督・脚本)

A1:ルーヴル美術館に行くと作品が沢山ありすぎて何を見たらいいか分からなくなってしまうのですが、とにかく夢中になってただただ見て、終わってみると、帰り道に自然と心に浮かんでくる感情があります。同じようにハイヒールを観ている時に答えが見つからなくても、終わったあとに、心に浮かんでくる感情や疑問を楽しんでもらいたい。そこから自分なりの答えを見つけてほしいなと思います。

A2:収集欲


菊地凛子(Kai)

A1:欲望が捻じ曲がった挙句なのか、欲望が真っ直ぐ過ぎたからなのか、その欲望を叶える為に何をするのか、見届けてください。

A2:睡眠欲


小島藤子(Blue)

A1:短いストーリーの中に様々な要素が入っており短いからこそよく見て、よく考えてもらいたい映画です。欲望という感情にはどんな存在も敵わない。お洒落で少しダークな世界観を楽しんでいただければ嬉しいです。

A2:知識欲です。いろんな知識を得てアンドロイドとしての生活を豊かにさせたいです。


玄理(Yellow)

A1:視覚にとことん贅沢させてくれる映画だと思ってます。郊外の別荘、ハイブランドの衣装、靴、モード誌のヘアメイクのスタッフさんたち、撮影監督は『るろうに剣心』で知られる石坂拓郎さん。普段映画は観ない、という方でもファッションを愛する人たちにぜひ見て欲しいです。これまで短編映画って「映画祭専用」だったんじゃないかと思います。私自身、映画祭ではたくさんの心に残る短編映画に出会いました。でも、一般に短編映画を観る機会ってとても少ないのが残念ってだなと思ってたんです。日本の映画館で、長編映画と並んで短編映画『ハイヒール』が公開上映されるのはとても画期的なこと。新しい映画との出会いがみなさんにあればいいなと思います。凛子さんが男前なのも見どころです。

A2:愛。絶対に愛。愛したい欲望と愛されたい欲望どっちかって言われたら、愛されたい欲望!笑


谷口蘭(Red)

A1:アンドロイドになっても出てくる欲望の美しさや醜さもみどころですが、半崎さんのアニメーションや、衣装、ヘアメイクも素敵で、芸術作品として観るのも、一つのみどころだと思います。個人的には菊地凛子さんの夢の中のシーンが好きです。撮影の思い出は、監督に役作りとして、メイド喫茶のメイドさんの様な可愛い感じにして下さいと言われ、自分なりに研究して撮影に挑んだことですね。もう一つ監督の演技指導で、近所にある不思議なクレープ屋さんに、1人一曲何点以上出したらクレープが1つ無料!というフリーカラオケスペースがあって、そこで発生練習も兼ねて何回も歌ったことが思い出に残ってます。クレープは貰えませんでした‥。短いですが、素敵な作品になっているので ランチタイムなど時間がある時に、さくっと来て、一瞬でも現実世界を忘れて、楽しんでもらえたら嬉しいです。

A2:音楽が好きなので音楽に感動する気持ちは残したいです。


三原康裕(Maison MIHARA YASUHIROデザイナー )

A1:靴職人が持つ「永遠に出ない答え」を未来の靴職人も持つ。そこが人間なんでしょうね。

A2:愛情


シトウレイ(フォトグラファー/ジャーナリスト)

A1:着ているもの、メイク、公園や部屋に何気なく置かれたオブジェの数々、、、

画面にあるあらゆるものにメタファーが隠されている。

それらを探す楽しみと、隠された意味を考察する愉しみ。

何度も何度も見かえしたくなる、

知的好奇心を刺激するファンタジー作品。

A2:好奇心


ヴィヴィアン佐藤(アーティスト/非建築家)

A1:未来の、いやすでに現代でさえ、イヴたちにはもう王子様や舞踏会は必要ない。

神経細胞を刺激する「カワイイ」を発見し判定する直感や本能。それが唯一の信頼できる最初で最後の原動力でもあり感情である。

バグによって再び「欲望」という感情が芽生えたが、それは支配や占拠や殺戮ではなく、鏡の中の他者の存在しない極北のナルキッソスの世界だ。

このアンドロイドたちには遥か昔、彼女たちの原型たるモデルが存在していたことに想いを巡らすことはあるのだろうか。

A2:知識欲。

といいましても通常の生活や社会一般にまったく役に立たないと言われている衒学的、ペダンティックな知識欲です。

役に立たないものや用途や機能が完全に失われたものの美しさや存在に大変惹かれます。例えばパーティーやデートではないときのお洒落や女装、戦争が終わった後のトーチカの廃墟のような。。。


東紗友美(映画ソムリエ)

A1:ハイヒール独特のあの婉曲したフォルムをここまで官能的に魅せた映画は他にあっただろうか。

ジェンダーレスな雰囲気に包まれた菊地凛子さん演じる靴職人の手により丹念に作り上げられたハイヒール。美しく艶かしくカツンと音を立てるそれは、まるで命を宿した生き物のようだ。

眩く、カラフルで、計算づくされた圧倒的な世界観は、初めて万華鏡を覗いた時とどこか似ていた。

自分を最も美しく見せてくれる靴が欲しいという渇望。

女を生きる上で避けられない心の叫びだったのか。

ハイヒールに足を通すたび、この映画のことが頭によぎるようになってしまった。この映画は、余韻が強すぎる。

A2:これまで出会った人との思い出じゃなくて良い。

好きな人との大事な瞬間。

シンプルに愛し、愛されたこと。

その時の多幸感に満たされた感情。

それだけは、絶対に忘れたくない。ロボットになって、失ってしまう記憶がたとえあったとしても中核にその記憶だけは残しておいてほしい。


mutsumi lee(製作総指揮・美術)

A1:撮影の時、Kaiの靴屋「果て(the end)」は本当に存在するのだ、と感じました。Kaiが居て、3人の客が来る。ここがどこかわからないけれど、本当にあるんだ!と。そんな気持ちにさせてくれた素晴らしいキャスト、スタッフには尊敬の念を禁じえません。特に思い出深いのは、美術監督の佐々木尚さんにチリからスカイプでアドバイスしてもらったことですね。想像してみてください。真冬夜中のチリと真夏真昼の東京が時空でつながり、大人たちが遠い未来の靴屋について真剣に話し合っているところを。アンドロイドが飲むパワーの液体はこんな感じだろうとか、未来の靴屋には何があったらいいか?と議論している姿は、子供のころにイメージしていた大人像とは全く違った!なんて愉快なのか!そして佐々木さんの情熱にも感動しました。

『ハイヒール』という物語の種がこの世界にポトリと生まれた瞬間から、映画館で公開するまでに丸三年。たった30分間の壮大なファンタジー。しかし、映画づくりはまだ続きます。みなさんがこの作品を観て生まれる感情そのものが、もう一つの映画だから。

A2:冒険心!


Takuro Ishizaka (撮影)

A1:<映画の見どころ>

柔らかい映像の中に、少しずつ現れていく欲望の芽生えを少しずつ感じてください。

<観客へのメッセージ>

わかりやすい表現の多いエンターテイメント映画が多い中、この映画は、見た後にあれはどう言う事?これは?と見に行った人との会話の中で疑問や、表現の受け取り方の違いを楽しめる作品かもしれませんね。

<撮影時の思い出>

過密なスケジュールの中、全く嫌な顔せずに全てを受け入れて、気持ちのいい風をいつも運んで来てくれた菊地凛子さんをはじめ、見事なアンドロイドぶりと振る舞いの中に気品を見せてくれた玄理さん、イノセントな容姿の中から欲望をうまく出してくれた小島さん、手の先の表現まで自由を見せてくれた谷口さんと、皆さん本当に魅力たっぷりでした。

A2:探究心


上野聡一 (編集) 

A1:物語よりも、世界観やコンセプト、映像や美術で見せていく作り方が、新鮮でした。それと同時に苦心もしました。普段、自分がいかに物語(脚本)に依存しているかということを痛感しました。映画はもっと自由でいいんだ、ということを監督から教わった気がします。

A2:「欲望」の範疇にならないかもしれませんが、「ロマン」でしょうか。


半崎信朗(アニメーション)

A1:衣装が素敵ですね。描いたりモデリングするのが面白かったです。ハイヒールのデザインもそれぞれ微妙に異なっていて楽しいです。近未来のようで、ファンタジーのようで、ゲームの中のような世界観も気になります。監督の頭の中にはこの世界を舞台にしたストーリーが他にもいくつかあるようですよ。

A2:猫欲。食べなくても、寝なくてもいい身体になったとしても、猫と戯れたいという欲望はあってもいいかもしれません。あ、でも犬欲でもいいです。


ノ・ヒョンウ (音楽)

Q1:見どころやメッセージなど

A1:<映画の見どころ>映画バベルをとても印象的に見ていたし...パシフィックリムでも見た菊地凛子さんと豪華な衣装、靴のデザインが断然印象に残ったポイントだと思います。

<観客へのメッセージ>物語の設定はアンドロイドだけが残った未来ですが、彼らが過ごす環境や衣装、インテリアは極めて人間的であるため、いくつかのポイントで音楽を作成することに非常に悩んでいました。悩み抜いた結果を観客の方が感じていただけたらうれしいです。

A2:個人的には「郷愁」が本当に美しい感情だと思います。多分最も永く残るし、古くなるほど変わる他の感情とは異なり、古いほど、よりその意味が正確になると考えています。しかし、やはりアンドロイドとは全く似合わないかもしれないですね。皮肉ですね。笑


武隈よしこ(VFX)

A1:光や色、音や美術や衣装、表情、欲望、感情、ダークな空気の中に微塵のずれもないバランスがもたらす緊張感がたまらない。

A2:ロマンを感じる気持ち。


ヤナイレミ(衣装)

A1:どこかの国、いつかの時代にタイムスリップしたような美しい映像と共に、人間として自分のこだわりは何だったのかを思いださせてくれる映画だと思います。

A2:「好き」と言う気持ち。(これが好き、誰かを好きと言う気持ちは全ての原動力になると思うからです。)


Yuka Washizu(メイクアップディレクター)

A1:美しい映像と妖艶なファンタジーの世界が魅力だと思います。

A2:感動


Kie Kiyohara(メイクアップアーティスト

A1:<映画の見どころ>菊地さんの感情の変化と共にメイクが変わっていく所や、靴、衣装も素晴らしいです!

<撮影時の思い出>夏の暑い中、みんなでワイワイと夜まで合宿みたいに過ごし、あの時食べたアイスが美味しかった事などです。

A2:食欲です!


Tomoko Sato(ヘア)

A1:夏の暑い中深夜までの撮影でしたが、とても楽しい撮影でした!!

物を作る側としては、それにかける情熱とこだわりなど、Kaiの気持ちに共感できるところもありました。背景、衣装、細かいところまでこだわっている美しい世界観が印象的でした。

A2:情熱かな。。。笑


仙波レナ(スタイリスト)

A1:映画の見どころは、やはりなんと言っても菊地凛子さんの不思議な美しさ。時が経ってからこの映画を観ても時代関係なくモダンな美しさを凛子さんはもっていらっしゃるのではないでしょうか…CHANELの衣装は時代を超越した美しさがあり、凛子さん演じるカイの品格をより一層高めてくれたと感じています。

A2:私は人類が滅びることがわかった時点で、それでもアンドロイドになって生き延びたいという気持ちがまずないです…苦笑 もしアンドロイドにどうしてもならないといけないのであれば、逆に無の境地にしてほしいかも…